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自分育てエッセイ

【第五回】 社会性を身につけるには
        〜人や物を大切に思う気持ちを育む



第四回目では、子供のやる気を引き出すために、自分を大切に思う気持ちを育てることが大事であることをお話しました。
今回はそこからさらに進んで、自分だけではなく身のまわりの家族や友達を大切に思う気持ち、そして社会性や協調性を育むには何が必要なのかについて考えてみたいと思います。

私たちは「社会性」と一言で簡単に言っていますが、この社会性とは何でしょうか。
英語ではSocial Skillと言いますが、これは
他者の感情
、意図を認識し、自分の感情、行動をコントロールし、協調するための技術」だとされています。
この定義を前半他者の感情、意図を認識し」の部分と後半自分の感情、行動をコントロールし、協調する」に分けて考えてみたいと思います。

社会性をこの定義に沿って考えるとすると、
相手の感情を認識できないところには、社会性はいくら身につけようとしたって身につかないということが言えると思います。
社会性の基本は5歳ぐらいまでにできると言われていますが、それは
共感能力を身につけることから始まります。
つまり、言葉以外のメッセージである相手の感情が理解でき、それに共感することができるように学ぶ必要があるわけです。

家族が、友達が、痛そうだ、苦しそうだ、悲しそうだということを共感するためには、自分自身が心の底から
実感する体験がどれほどあり、それに共感してもらえたかどうかが大きく関わってきます。
「実感」とは他人が教えられるものではありません。
子供は
遊びの中から「痛いこととはどんなことか」「苦しいのはどんな感じか」「悲しいのはどんな時か」を実感、この時に周囲の人から「痛いね」「苦しいね」「悲しいね」と共感してもらうことによって、それがモデルとなり、共感できるようになるのです。
まずは、質の高い
遊びを沢山させて(TVゲームなどでは相手の顔を見ることがないので身につきません)、様々な場面で子供に沢山共感してあげてほしいと思います。

では、次に前述の社会性の定義の後半部分「自分の感情、行動をコントロールし、協調する」について考えてみたいと思います。

心理学者エリクソンの「人間成長の8段階」の考え方を見てみましょう。

 第1段階(乳児期)       基本的信頼  ⇔ 基本的不信
 第2段階(2歳前後)      自律性    ⇔ 恥と疑い
 第3段階(3〜6歳)      イニシアチブ  ⇔ 罪悪感
 
第4段階(児童期)       生産性    ⇔ 劣等感
 第5段階(思春期)       自我同一性  ⇔ 役割の混乱
 第6段階(成長期)       親密さ     ⇔ 孤独
 第7段階(親となる時期)   生殖性     ⇔ 沈滞
 第8段階(中〜老年期)    自我の統合  ⇔ 絶望

人間の成長は環境によるものが大きく、それぞれの段階で適切な環境が与えられるかどうかで成長に大きく影響します。
この段階の中で、社会性に大きく関わる部分は第4段階(児童期)生産性⇔劣等感です。
第1段階〜第3段階までは母性であるのに対して、就学してからの第4段階は父性をとりこむ時期になります。

エリクソンは、「生産に参加していないエネルギーのはけ口」として、
「遊び」を大人になるための予行演習だとしています。
そして、この「遊び」も幼児期までの
「平行遊び」から「役割遊び」に変わっていきます。
「平行遊び」とは、子供がそれぞれ自分が主人公であり、平行して遊んでいる状態のことを言います。
それに対して
「役割遊び」では、子供がそれぞれ違う役割をもって初めて成り立つ遊びであり、鬼ごっこなどの集団遊びやチームプレイのスポーツなどもこれにあたります。

例えば、野球をする場合でも役割を決めないと野球になりませんから「オレ、ピッチャーやる!」「ボクもピッチャーがいい!」「僕も!」
とみんながピッチャーをやりたがっても、必ず折り合いをつけて役割を決めてから始めますね。
子供は役割遊びの中では
いつでも主人公になれるわけではなく、その過程で我慢することを経験するようになり、これが「自分の感情、行動をコントロールし、協調する」ことに繋がっていくわけです。

これに対してTVゲームなどはいつでも自分が主人公になれますし、失敗したらリセットしてやり直しすればいいわけですから、我慢する必要がありません。
我慢することが養われていないと、ちょっとした
ストレスにも耐えられなくて人や動物を傷つけてみたり、自分を傷つけたりしてしまうことに繋がる可能性もあります。

ここで誤解していただきたくないのは、何もTVゲームが悪と言っているわけではないということです。
それよりも、放課後はお稽古事や塾で忙しいから友達と大勢で遊ぶ時間がないなど、子供が集団遊びをしにくい環境になっているのも一因かもしれないですね。
つまり大人が与えてしまった環境が、ストレスに弱い人間を作り出していると言えるのかもしれません。

子供の社会性、協調性を育てるには、
共感能力を身につけるためにも、そして我慢することを学ぶためにも「仲間遊び」をすることが大事です。
後になってからいくらでも身につけることのできる「知識」や「技術」を身につけるために、今しかできない「遊び」を犠牲にする環境は、できるだけ与えないようにしたいと思います。